東京地方裁判所 平成11年(ワ)9540号 判決 2000年7月06日
別紙当事者目録記載のとおり
主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告槇田家和、同新納英雄、同清水誠之、同石川浩、同柿沼敏夫、同藤山智昭、同安達英夫、同小泉次郎、同戸田沢千枝子、同戸田沢隆史及び戸田沢誠二は、株式会社八千代銀行に対して、連帯して、一五億五二〇〇万円及びこれに対する被告戸田沢隆史については平成一一年六月一〇日から、その余の被告については平成一一年六月九日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告槇田家和、同新納英雄、同石川浩、同柿沼敏夫、同藤山智昭、同安達英夫、同小泉次郎、同方波見博美、同星輝明、同戸田沢千枝子、同戸田沢隆史及び同戸田沢誠二は、株式会社八千代銀行に対して、連帯して、一三億六九〇〇万円及びこれに対する被告戸田沢隆史については平成一一年六月一〇日から、その余の被告については平成一一年六月九日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 原告は、株式会社八千代銀行(以下「八千代銀行」という。)の株主であり、被告らは八千代銀行の取締役及び取締役であった者並びに同行の取締役であった戸田沢和男の相続人である。本件は、原告が被告らに対して、八千代銀行に対する損害賠償を求める株主代表訴訟である。
二 原告の主張の骨子
1 八千代銀行は、平成八年一〇月一日から同九年九月三〇日までの間に、株式会社タケダ(以下「タケダ」という。)に対して一五億二〇〇〇万円を貸し付けた。その際、八千代銀行は、タケダの専務取締役武田辰雄所有の土地建物、タケダの代表取締役武田信雄所有の土地建物にそれぞれ極度額八〇〇〇万円の根抵当権を設定した(以下「本件各担保」という。)。
被告槇田、同新納、同清水、同石川、同柿沼、同藤山、同安達、同小泉及び戸田沢和男は、右貸付時に、八千代銀行の取締役としてその融資業務において決定をする立場にあった。
2 八千代銀行は、平成九年一〇月一日から同一〇年九月三〇日までの間に、タケダに対して、一三億六九〇〇万円を無担保で貸し付けた(右貸付けと前記1の貸付けをあわせて「本件各貸付け」という。)。
被告槇田、同新納、同石川、同柿沼、同藤山、同安達、同小泉、同方波見、同星及び戸田沢和男は、右貸付時に、八千代銀行の取締役としてその融資業務において決定する立場にあった。
3 タケダは、平成一一年二月一四日、解散決議を行い、現在は特別清算手続中であり、本件各担保からも回収見込みはなく、本件各貸付債権は回収不能となった。
4 本件各貸付けは、タケダが実質的には倒産状態であり回収の見込みが全くないにもかかわらず、十分な担保を取らずに又は無担保で実行されたものであり、本件各貸付け当時に融資を決定した取締役である被告ら及び戸田沢和男には善管注意義務違反がある。
5 戸田沢和男は、平成一〇年一月二〇日に死亡し、被告戸田沢千枝子、同戸田沢隆史及び同戸田沢誠二が相続した。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所は、被告らの申立てにより、平成一二年四月三日、被告らのための共同担保として、本件訴えの提起について、この決定の確定した日から一四日以内に三〇〇〇万円の担保を提供すべきことを原告に対して命ずる決定をした(本件担保提供命令)。
本件担保提供命令に対して、原告が即時抗告をしたところ、東京高等裁判所は、平成一二年六月五日、右抗告を棄却する決定をし、右決定正本は同月七日原告代理人に送達され、本件担保提供命令は確定した(なお、原告は東京高等裁判所の決定に対して特別抗告を申し立てているが、特別抗告には確定遮断効はなく(民事訴訟法一一六条一項、三三六条三項)、東京高等裁判所の決定が原告に告知された時点で本件担保提供命令は確定している。)。
しかるに、原告は、本件担保提供命令の定める担保を提供すべき期間内に担保の提供をしたことを当裁判所に届け出ていない。
二 以上によれば、原告は、当裁判所から命じられた期間内に命じられた担保を提供していないと認めることができる。
よって、本件訴えは、民事訴訟法八一条において準用する同法七八条によりこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき同法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 菅原雄二 裁判官 小林久起 松山昇平)
<以下省略>